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右と左のアンビバレンス

日本赤軍の永田洋子の父親は「娘はガチガチの右翼ですよ」と言ったそうだ。

対極は正反対でありながら、北極と南極のように、磁石のNとSのように、そっくりで、性質という利害が合致するところがあるものだ。

日本とアメリカの安全保障条約には、右翼も左翼も反対活動をした。

昨年のBreixtとトランプ当選の構造は、そうしたことに似ている。

古き佳き時代の、世界の覇者大英帝国、片やヨーロッパや太平洋諸国を悪の領袖から救ってやった強いアメリカを取り戻すという保守層の永い潜在欲求に訴えつつ、同時に移民を追い出し、労働者の中でも主に単純労働の弱者に仕事を取り戻すという現状差し迫ったニーズに直結している。

そしてとても大事なこと、、、現状の生活や具体的な望みに直結している「わかりやすい」政策である。

振り返ってみれば、2016年のこの2つの歴史的なサプライズは、世界の現状からして合理的で、自然なことであったように思える。

極右のマリーヌ・ル・ペンと、極左のジャン・リュック・メランションは、まるっきり逆なようで、反EU・反移民という点で政策が一致している。

今の時代の世界に、中道・中間層が実際どれほどいるのだろうか。

〈移民流入?別にいいんじゃない?自分には関係ないよ。自分の確固たる仕事品質・技術はそんなものに影響され、仕事を失うような心配はないさ〉

と言い切れる安定生活を持ち、かと言って、いつでもセミリタイヤできる運用資産を持つ富裕層というほどではないという人がどれだけいるだろうか。

そもそも、ITの波によって、これまで盤石だった学歴・職歴や人脈が無力にさえなり得るどんでん返しが割りと日常的に起きている。

画期的なアイデアや、それをフィニッシュさせるタフな活動力は意外な出自から、既に現れている。

大きなパラダイム・シフトの渦中というベースがある。

余裕の暮らしをしている専門職でも、老後や子々孫々の時代どころか、五年先十年先まで安泰と安心していられる人がどれだけいるだろう。

そう考えると、「中道やや左」の適度なインテリ中間層へ訴求する、多くの人が常識的で温和で知的で真っ当な紳士だと感じる候補は、今の時代実はかなり弱いのではないかと思えてくる。

(もちろん、良し悪しの話ではない。)

明日4月23日の日曜日、フランス大統領選挙第一回投票日。

上位二人が二週間後の5月7日の決戦投票に進む。

どういう筋となるだろうか。

ユーロは現在117円。

かなり低水準である。

昨年の2つの歴史的サプライズより、それぞれのその後のポンド巻き返しやドル巻き返し(トランプラリー)の方が予想外だった、第三のサプライズが最も大きかったと言ったストラテジストがいる。

Frexitへの道筋が織り込まれ、筋から言えば暴落すべきところが反騰を狙われている点が昨年とは異なる。

リュック・ベッソンの『アンジェラ』のように(あの映画はアレクサンドル三世橋だったが)ここからセーヌに身投げしたとしても、右岸・左岸いずれかまで50mほど、着衣していても簡単に泳ぎ着いてしまうだろうな、と思った。

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