パリに骨を埋める、には?
- marquis81
- 2017年7月21日
- 読了時間: 6分
初め、「アラ還からのフランス永住方法」「パリ、永住権付き不動産情報」というようなキャッチーなタイトルを考えた。
断っておきたいが、決してふざけた気持ちは無い。
アラ還にもなると同世代や年少の親族や友人・知人の死を相当数経験し、その度に死が非日常のもののようでいて日常の中に常にあるものだということに気付かされ、いつしか受け容れているものである。
「骨を埋(うず)める覚悟」とは、よく耳にするフレーズだ。
だいたい「死んでも・・・」「一生・・・」「絶対・・・」というような決意表明の仕方をする人の覚悟はアテにならないものだ。
きっと、あなたにも思い当たる人物が周囲にいることでしょう。
「いやこの場合は・・・」「さすがに・・・」などと悪びれもせずに言うのがオチの相場だろう。
とても担保しきれない契約を口にする時点でロジカルな人物では無い、約束事を守るつもりが無いようなアンフェアな思想構造の者、あるいは言葉の意味することの重みを理解しない者であることを証明しているようなものなのだから、必然的にそうなる。
「骨を埋める覚悟で・・・」というものもそうした軽薄な決意表明に並んで、あるいは準じて使われている印象があるが、こちらは実効性・実現性に現実味がある分、必ずしも薄っぺらく幼稚なその場の「話だけの話」というものでも無いという場合はある。
フランスの学生ビザ申請が却下されるケースが増えているらしい。
また、めでたく学生ビザを得て専門課程や大学院、ディプロマコースなどを終了後に一般的な学部語学科目を履修しようとしたところ、退去命令を受けたというような話もある。
ビジター・ビザがフランス大使館推奨だが、私の年齢と立場で仕事を合法的にしたいとなると投資家ビザが現実的か。
そもそも、フランスには永住ビザというものは無く、永住しようと思えばフランス人と婚姻し所定の手続きを経て国籍を得、そのために日本の国籍を捨てなければならない。
国籍とは?国・国家とは?人間とは?
いろいろ考えてしまうことになる。
ジム・ロジャーズが随分前の著書に書いているが、グローバリズムの台頭が正反対のリージョナリズム・民族主義・愛国主義を急激に進行させることになっているのである。
前置きが長くなったが、こんなオンライン見積もりをした。

obseques-infos(土葬情報)というサイトの無料オンライン見積もりで、火葬にしてもらい、式典(葬式)なし、最安の棺(棺無しを選べなかったため)、25ユーロのオーナメントを付けて貰い、最安の壺、埋葬ライセンス(全仏平均額)、ペール・ラシェーズ墓地での火葬埋葬した場合の合計額である。
フランスでは火葬の割合が上昇し、今では半数近くに上っているそうだ。
日本で火葬のみ、式典の類いを一切やらず散骨で済まして貰おうと考える人は少なくないようだ。
それでも法律により24時間の遺体安置、それになかなかDIYでは現実的に難しい遺体運搬などもあり、やはり葬儀社は頼まざるを得ない。
それでも、十数万円で全てできるらしいから、フランスが高いと言えるのか、今のところリサーチを十分にしたとは言えないので決めつけられない。
この他に、墓地の永代使用料が必要であるが、これはパリ市内均一料金のようである。
サイトに一覧表が掲載されている。
2012年のタリフが最新の料金なのだろう。


サン=サーンスやセルジュ・ゲンズブールが眠るモンパルナス墓地も、ショパンが眠るペール・ラシェーズ墓地も同額である。
オンライン見積もりで仕方なく棺を選んだが、1㎡の墓所には入らないのではないかと思う。
おそらく骨壷で1㎡に埋葬して貰うことは可能であろう。
娘の先に子孫が現れるかどうかわからないが、いずれにせよ後々の者に面倒な思いをさせたくないので永代perpétuelleにしたい。
3,619+6,715=10,334ユーロ
130円換算で134万円余り。
日本では、自宅内での死亡事故は交通事故死より多いそうだ。
これは、公的資料の根拠がある。
家の中に居ても死ぬことが、現実にある。
外国滞在中に死んでしまうことは、少なくとも自宅内と同じ程度の可能性で起こり得る。
その場合、どうなるか。
多くの国で死者への敬意は法的にも払われ、守られ、遺体や遺骨を祖国に運ぶ場合には通関の処置などいわば特例的な配慮がなされる。
しかし、遺体をヨーロッパから国際航空便で運び、日本でその後のプロセスをするのは想像するに相応の労力を要することだろう。
大事なことだが、その労力は自分ではなく、遺族が抱える、抱えさせてしまうものだということである。
彼の地で火葬をし、お骨を運ぶのが現実的なところだと思う。
骨になった後をどう考えるか、である。
ところで、当代最高の流行作家をも凌ぐであろう最高額の執筆料の「作家」さんたちが、日本にはたくさん、各地の随所にひっそりと存在していることをご存知だろうか?
父は名も無き(歴史はあるようだが)寺の先祖代々の墓に入ったが、戒名代80万円を取られた。
随分な「執筆料」である。
先に触れた散骨だが、「散骨」で検索すると日本で安価に散骨代行や散骨葬を行っている業者がたくさん出てくる。
フランスでも散骨は増加しているらしいし、フランソワーズ・サガンが女優マリー・ベルの遺灰をコレクションしていたように遺骨や遺灰を家の中に置いておくことは以前より珍しくないことのようだ。
実は、自分も散骨して貰うという選択肢を最有力にしている。
法的には、ほぼ制約が無いようだ。
しかし、散骨はひとまず置いておいて、何か希望・憧れを感じる「好きな場所に永代埋葬される」という選択をここでは考えたい。
お寺の作家氏に高額執筆料を払いたくない。
遺族の財産を浪費させたくない。
フランスについてリサーチした結果では、どこの国籍でも、ビザがどうあれ、フランスで埋葬されることは完全に合法的にできるようである。
パリに「骨を埋める」。
余生はパリに「永住」する。
嘘偽りないことがおわかりいただけたと思う。
日本にお墓の用意が無い、何らかの事情で先祖のお墓に入りたくない、そうした方ならば、これこそ真にグローバルでボーダーレスに、それも永代、つまり死後もほぼ永遠に地球の好きな場所に居られるのだという話である。
死んだらおしまい?
別な見方をすれば、法的に死亡が認められ、火葬が合法的にされた時点でモノになる、ということではある。
それはそうだが、いずれにせよ行政手続きと最低限火葬、前述した通りそのためのプロでなければ行いにくい処理があるのだ。
死体遺棄罪というものもあるし、話が逸脱するが、自宅内で死亡した場合病院で死亡する場合に比べて警察の取り調べなどいろいろと厄介な目に遭うことが少なくないらしい。
はいおしまい、とは行かないし、それを最後のメッセージにするのは本人にとっては粋なつもりでも、こんな利己的なものは無い。
完全な準備をしていたって、遺族や様々な関係先に面倒な思いをさせるのだから。
閑話休題。
掛け捨ての海外旅行傷害保険でも、死亡ならば一千万円にはなっているだろう。
墓地購入(永代使用料)まで認められるかわからないが、火葬から埋葬までの3,619ユーロは出るのではないかと思われる。
ちなみに、祭祀財産であるお墓は日本では差し押さえの対象にはならない。
フランスでも同様であろう。
通常の不動産以上の安全資産だと言える。
ペール・ラシェーズ墓地、ショパンのお墓の隣りはおそらく期待しにくいが、「ご近所」「ご町内」には現実的になれるのである。
中途半端にショパン作品を弾くような素人のことは、彼ならきっと苦々しく思うだろう。
留言